映画『トイレのピエタ』

ストーリー

画家への夢を諦め、窓拭きのバイトでやり過ごすように日々を送る園田宏(野田洋次郎)。美大時代の恋人さつき(市川沙椰)と再会し、彼女の個展に誘われるが、もはや絵など見る気にもなれない。ビルの壁に貼り付いて窓を拭く自分を虫のようだと思っていたある日、宏は突然倒れ、病院へ運ばれる。人体実験のような精密検査。結果は家族と一緒に聞かなければならないそうだ。

郷里の両親に連絡するのは煩わしい。さつきに頼み込んで病院に来てもらうが、絵を巡って口論となり、彼女は早々に帰ってしまう。
その時、若い女の声がロビーに轟いた。

「制服破れたんですけど、弁償してもらえますか!?」

女子高生の真衣(杉咲花)がサラリーマンを相手に因縁を付けている。

宏は真衣に声をかけ、制服代を払う代わりに妹役をやってほしいと持ちかける。
風変わりな依頼に首を傾げながらも、宏に付いてくる真衣。

ストーリー

「胃に悪性の腫瘍ができてます。このまま何もしないと3カ月くらいの命ですよ」

突然の余命宣告。呆然とする宏に、傍らの真衣は明るく声をかける。

「今から一緒に死んじゃおうか?」

バイクの後ろに真衣を乗せ、スピードを上げる。
だがそのまま死んでしまうことなどできなかった。

入院して抗がん剤治療を始めた宏は副作用に苦しめられる。
郷里から駆けつけた父(岩松了)と母(大竹しのぶ)には、本当の病名は伝えられない。

ストーリー

突然もうすぐ死ぬと告げられてもなんの実感も得られず、漠然とした恐怖に支配される宏。
それでも過ぎていく入院生活の中で、同室の患者・横田(リリー・フランキー)や小児病棟の拓人(澤田陸)と拓人の母(宮沢りえ)らと出会い、これまで知らなかった世界を垣間見ることになる。

ストーリー

拓人が大切にしていた塗り絵を捨ててしまった宏は、お詫びに自作の塗り絵をプレゼントすることを思いつく。久しぶりに絵を描こうとしたものの、資料となる本を買ってきてくれる人がいない。その時宏は真衣の存在を思い出す。

「何なの?入院してる暇人と違ってこっちは忙しいんだけど!」

相変わらずの勢いに押される宏。しかしそれ以来、度々病院にやって来るようになった真衣との間に奇妙な交流が始まった。

「あのさ、背の低い子とキスする時はどうするの?」

ストーリー

病人相手でも容赦なく、ありのままの感情をぶつけてくる真衣。
彼女は彼女の事情の中で、寂しさや憤りを抱えているようだ。

「あんたなんか自分で生きることも死ぬこともできないじゃん!」

残された時間を知るまでは、この夏もいつものように、やり過ごすだけの季節になると思っていた。
それが人生最期の夏に変わってしまった時、目の前に現れた、あまりに無垢な存在。

戸惑い、翻弄されながらも、宏は生と死の間に強烈な光を見る。

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