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ニューアルバム「人間開花」ライナーノーツ&インタビュー
2016.11.22
 本当におめでとう。まずは祝福の言葉を捧げたい。RADWIMPSのニューアルバム『人間開花』は、そのタイトルどおり全方位に開かれた音楽像と人間力に満ちあふれている。筆者はアルバムの音源を聴く前に『人間開花』というタイトルを見て『人間開花』=「人、限界か?」であるとか「人間か以下」のような言葉の裏に潜んでいる痛烈なメッセージがあるのではないか?と深読みしてしまったのだが、それはまったくの見当違いだった。前々作『絶体絶命』と前作『×と○と罪と』を経て、いつの間にかRADWIMPSの音楽像=ヘヴィな内容という固定概念を抱くようになっていたのだと思う。こちらのそういった一方的な思い込みをよそにRADWIMPSは『人間開花』であまりにフレッシュな変化と進化を果たしてみせた。バンドは音楽を奏でる生き物だ。数人の他者同士が一体となって音楽人生を描いていく、かけがえのない生き物だ。『人間開花』はそんなことをあらためて再確認させてくれる。

 前作『×と○と罪と』から約3年。この稿を読んでいるあなたにはもはやいうまでもなく、RADWIMPSにとってこの3年―――いや、もっといえばデビュー10周年のメモリアルイヤーだった2015年から、この『人間開花』が完成するまでの時間はあまりに激動の季節だった。アジアとヨーロッパを回る海外ツアー「RADWIMPS 2015 Asia-Europe Live Tour」がスタートする約2週間前の9月23日。ドラマーの山口智史がフォーカル・ジストニアという神経症の治療のために無期限の活動休止に入ることが発表された。海外ツアー終了後にはバンドにとって初の対バンツアー「RADWIMPSの胎盤」の開催も決定していた。

 10周年に訪れたバンド史上最大の危機。しかし、野田洋次郎、桑原彰、武田祐介の3人はRADWIMPSの歩みを止めなかった。森瑞希と刄田綴色という2人のサポートドラマーを迎えることで海外ツアーと「胎盤ツアー」を敢行した。目の前に立ちはだかった巨大な壁をタフに乗り越え、結果としてバンドの結束力と音楽へ注ぐ情熱をさらに高めてみせたのである。

 海外ツアーや「胎盤ツアー」と平行して進めていたのが、新海誠監督の映画『君の名は。』の劇伴制作だった。RADWIMPSは映画に寄り添い、自らの手で運命の軌道を変え互いを引き寄せようとする『君の名は。』の主人公・瀧と三葉と同化するようにして、ストーリーにかけがえのない音楽の生気を吹き込むサウンドトラックを完成させた。「夢灯籠」、「前前前世」、「スパークル」、「なんでもないや」という主題歌と位置づけられた歌モノの4曲――前者2曲はバンドサウンドのシンプルかつフレッシュなダイナミズムが浮き彫りになり、後者2曲は劇伴制作を通して得た壮大なスケール感を宿したサウンドスケープや精緻なアレンジが施されている。インスト楽曲で、洋次郎はピアノやストリングスと真摯に向き合い、桑原はギタリストとしてのアイデンティティを示し、武田は音響派にも通じるトラックメイキングを見せた。そして、ご存知のとおり『君の名は。』は2016年を代表する社会現象ともいえる大ヒットを記録。劇伴を制作したRADWIMPSの存在も新たなステージへ引き上げた。

 あまつさえ洋次郎はその滾り続ける音楽的な表現欲求をソロプロジェクト、illionにも注いだ。illionの2ndアルバム『P.Y.L』はダブステップをはじめとするベースミュージックやインディR&Bなどにも通じるサウンドプロダクションを、同時代的かつ独創的なアートフォームを創造するように昇華。どこまでも感覚的で抽象性の高いサウンドスケープが広がっているが、これは洋次郎が生み出す歌の宿命であるかのように、メロディには剥がれ落ちようのないポピュラリティも帯びている。『P.Y.L』今の野田洋次郎が音楽表現を止めない“理由の理由”を描くような作品だった。

 以上、ここに書き連ねたことのすべてが『人間開花』というアルバムにフィードバックされている。だからこそ、本作は最高にオープンマインドで感動的なアルバムなのだ。さあ、ここからはキーワードとともにメンバーの言葉を引いていきたいと思う。

●『人間開花』の開かれた作品性
野田:『人間開花』は3年かけてレコーディングしたアルバムなんだけど、終盤は「光」や「O & O」や「ヒトボシ」とか一気に開かれた曲を録っていったんですよね。「胎盤ツアー」をやって、よりいろんな人にラッドの音楽を届けたいなというマインドが強くなった。そのあとに『君の名は。』の劇伴制作を本格的に進めていって。『君の名は。』という映画の存在はもちろん、これまでのいろんな出来事がバンドをこのアルバムに導いてくれたと思っていて。今までは自分のなかで開こうとしてもどこかでブロックがかかる境界線があったんだけど、新しい視点を持ったことで「まだまだ行けるな、そこで何が歌えるだろう?」ってどんどん開かれていったんですよね。

武田:洋次郎の曲作りのスピードもとにかく速くて、毎回「やっぱ洋次郎すげえな」って思いながら聴いてましたね。

野田:illionの楽曲制作も止まらないスピード感で進めていって、そこでまた新たなグルーヴが出てきたんです。このスピード感のままラッドのアルバムも完成までもっていきたいと思ったから。『君の名は。』で確立した制作の方法論も大きかった。アレンジのアイデアをそれぞれが持ち帰って考えて、レコーディングは勢いで録り切るという。きっと2人(桑原と武田)もどこかに不安はあったと思う。でも、俺のなかで明確なビジョンがあったから。結果的に「やっぱり大丈夫だったでしょ?」っていう。

武田:確かにちょっと不安だったけどね(笑)。

野田:でも間違いなかったでしょ?

武田:うん、そうだね。

野田:とにかくドキュメン性を大事にしたかった。それはこれまでにはない感覚で。

桑原:智史が休止に入ってからどんどん前に進まなきゃいけない状況で。10周年だし、その時点で『君の名は。』の劇伴の話も決まっていたし。そのなかで『君の名は。』の劇伴制作でも、illionでも洋次郎の開け方がすごかったなって。この人はどれだけ瞬発力があるんだとも思ったし。

野田:智史の活動休止が決まって、RADWIMPSが消えるんじゃないかという恐怖感は数日間あった気がする。でも、結果的にRADWIMPSを続けるために大事なものだけが明確になったよね。

桑原:うん。ここだけは守っていかなきゃということが。

野田:俺の話だったら2人に対して過保護だった部分を相手に預けるというか。俺は俺でいっぱいいっぱいなところがあったし、2人も2人でいっぱいいっぱいだったと思うから。 智史がいないところをみんながちょっとずつ大人になって補っていこうって暗黙の了解があったと思う。

●『君の名は。』の劇伴制作で得たもの
野田:『君の名は。』の劇伴で得たものは間違いなく大きくて。じつは「光」は最後の最後まで『君の名は。』の劇伴に入れるか迷った曲で。「前前前世」か「光」で迷ってた。「前前前世」はホントにど真ん中な曲だし、言葉が強い曲で。でも、せっかく監督が真ん中に引きずり込んでくれるなら、そこに乗っかってみようと思ったんですよね。さらに言っちゃうと1曲目の「Lights go out」も『君の名は。』のド頭に流れるイメージで作ったんだけど、英詞がネックになって採用されなかったんだよね。個人的には「これ、キターッ!」って思ったんだけど。だから、『人間開花』の1曲目は「Lights go out」に飾ってもらいたくて。この曲も何かが始まるというイメージだけで作ったんです。

●illionの音楽性からのフィードバック
野田:「AADAAKOODAA」はほぼ最後に作った曲で。『人間開花』の次に向かうべき欠片のような曲を残したいという思いがあって。それがこの曲を作るモチベーションになりました。あと、ドラムのサポートの瑞希が相当な逸材なので。「AADAAKOODAA」なんてめちゃくちゃ打ち込みのリズムが入り組んでいるんですけど、それに対してかなりの精度で生のドラムを合わせられる。俺がやりたいことをその場ですぐに具現化してくれるから。それもかなり大きかった。illionの制作のフィードバックもあって、リズムをメインに音作りを始めた曲が何曲かあって。それがアルバムにおける低域の一貫性になってると思います。バンド主体の曲でもキックの重さを活かそうと思ったんですよ。たとえば「棒人間」も速い3拍子の曲なんだけど、ダンスミュージック的なキックの強さがあるんですよね。

●RADWIMPSの音楽、その未来について
野田:『人間開花』で確かに変化したし、次のアルバムでまた新しい音楽性を提示できると思います。『人間開花』は『君の名は。』の劇伴とラッドのオリジナルアルバムが合体したよう作品だと思うから。この10年間で培ったものと『君の名は。』によって引き出されたものがあって『人間開花』は生まれた。だから、次のアルバムでまた音楽的にたどり着く場所があると思います。

武田:個人の責任が増したと同時にメンバー間のやり取りがグッと増えているので。そのことでアレンジの自由度もさらに高くなった。 今回は僕が生でベースを弾いてない曲がけっこうあるんです。そういうときはプログラミングやシンセを担当して、ときにはギターも弾いたり。そういう方法論を『君の名は。』の劇伴制作で得ることができたので。これまで以上にサウンドメイキングに貢献できるようになったし、次のアルバムを作るまでにもっとスキルが上がってると思います。

桑原:うん、もっと自由になれると思うし、いろんなスキルを上げられると思う。

野田:『君の名は。』然りですけど、ラッドはたまたま世の中と奇跡的におもしろい交わり方ができて、そこから続いていく道のりのなかで『人間開花』を作ることができたから。今のラッドはロックバンドのワクワクする可能性みたいなものを提示できる状態にあると思うんです。「トアルハルノヒ」や「週刊少年ジャンプ」で歌っていることにもつながってくる話かもしれないけど、今の10代の子たちに「ロックバンドってこんなに刺激的な存在なんだ」って思ってもらえるような音楽を作って、〈ロックバンドなんてもんを やっていてよかった〉(「トアルハルノヒ」)ってまた自分たちで思えるような存在であり続けたいと思います。

取材・文/三宅正一(Q2)
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